健康診断トピックス
第20回テーマ
貧血を放置していませんか?
貧血は赤血球内のヘモグロビン(Hb)濃度 (血色素量ともいいます) が低下した状態であり、世界保健機関 (WHO)により、15歳以上の方は男性で13.0 g/dL未満、女性で12.0 g/dL未満 (妊娠時は11.0 g/dL未満) と定義されています。さらに程度により、11.0以上の軽度、8.0-10.9の中等度、8.0未満の重度貧血に分類されています。
肺に取り込まれた酸素はヘモグロビンに結合して体全体に運ばれるため、ヘモグロビン濃度の低下により酸素の運搬能力が低下します。
ゆっくりと貧血が進む場合、ある程度まで症状は出現しにくいですが、進むと頭重感、易疲労感などが出現し日常の生活に影響してきます。ひどくなると運動時の息切れやふらつき、さらに全身の臓器の機能低下、ことに心不全を起こしやすくなるといわれています。
貧血の原因は、若年者の場合は鉄欠乏が圧倒的に多く、中年以降の女性では子宮筋腫など婦人科疾患が多くなり、また男女問わず年齢とともに悪性疾患や薬剤性 (制酸剤等)などが増加していきます。その他、低栄養、ビタミンB12・葉酸欠乏、消化器疾患、血液疾患、甲状腺疾患、腎疾患、微量元素(銅や亜鉛)欠乏などさまざまな原因で起こります。
貧血は症状が出づらく、また特徴に乏しいため放置されがちですが、放置してはいけない疾患が原因である可能性があり、原因を調べていくことが重要です。また、上に述べたように頭重感・易疲労感など疲れや年齢によるものと思っていた症状の原因が貧血のためということもあり、貧血の治療を行うことで症状が消失すれば快適な日常生活を送ることが可能となります。
ヘモグロビンの低値、特に低下傾向の方、体重減少を伴う場合や他の血球 (白血球・血小板) 数が基準範囲外の方は、自分で原因を決めつけることなく、通院中の方は主治医に、通院していない方は医療機関を受診してご相談ください。
(文責:医師 吉野 薫)
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